出産を控えた妻が実家に帰っているために、不慣れな家事に追われたり、逆に時間を持て余したり……
つまりは他人から見れば平凡で退屈な、だけれど間違いなく幸せといえる日々。
ある日一通の封筒が届く。手紙のようなものは見当たらず、中には一枚の写真が入っているだけだった。
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ダビングを重ねたビデオの映像を、そのままカメラで撮影したであろうその写真はひどく粗く不明瞭で、しかし俺だけは見間違えるはずも無い過去からの刃。
戯れに撮影した、そしてとっくに処分したはずのビデオ。その1シーン。
呼び出しの意図なのだろう。写真の裏に住所とそう遠くない日時。
その下に記された名前は、意外というべきかやはりというべきか。 |
被写体本人……妹のものだった。
指定されたその日、指定されたその場所――数年ぶりの郷里に足を運ぶ俺の耳の奥で、脈打つ鼓動が破滅を示す足音のように重く響いた……